「インディと私」〜それぞれのStory〜
  
中野信治「来年こそは勝負出来る体制で臨む」
多くの挫折を味わい、苦悩の連続となった今シーズン しかし同時にそれは、新しい自分を生み出すキッカケともなった

―今年出場した2つのレースについて、感想を教えてください

インディ500に関しては、これぞアメリカの究極、まさにお祭りって感じですよね。F1のモンツァの観客も熱狂的だけど、やっぱりヨーロッパとは雰囲気が全然違いますよ。観客のレースに対する特別な感情というものを、強く感じました。でも僕個人としては、インディ500ともてぎは、初めて自分の手で勝ち取ったシートだったので、まず参加できたことが一番感慨深かったですね。

中野信治

―今年はレースに参戦するチャンスになかなか恵まれなかった…

もちろんレーサーだし、走れる機会に恵まれないということは、非常に悔しい状況ではありますよ。今までなら海外を転戦しているシーズン真っ盛りの時期に、日本にいる自分が本当に嫌でしたね。これまでは年に2週間くらいしか日本にいなかったこともあるし、こんなに長くいるのは8年ぶり。レースもインディ500以降、3か月ぐらいまともに見ませんでした。でも、これまでと違った生活を送ることで、人間的な面でいろんなことを学べたことも事実です。

中野信治

―では、中野さんにとって転機でもあったと

今までは、全て敷かれたレールの上を歩んできて、自分はレースをすることだけしか考えてこなかった。でも今年は、自分で一からスポンサーと交渉をして、企画書を書いたり、プレゼンをしたりと、さまざまな経験をさせてもらいました。門前払いをされた事もあるし。思い出すだけでも嫌ですけど…。でも、だからこそ重要なことが見えたということはありますよね。

―具体的には、どんな部分なんですか?

自分の中で、人と会うとか、コミュニケートするということの意味が確実に変化しましたね。この1年で得られたことって、やっぱり人脈ということが一番大きいです。それも本当の意味でのね。仮に5年後、10年後に僕がレースを離れても、いろんなことが出来る自信が、今はありますよ。

―中野さんを取り巻く側の人間も、これまでとは変わった?

やっぱり今までは、F1やCARTといった僕の地位に対して集まってきてた人たちが、少なからずいたってことですね。そりゃ、ずいぶん多くの人が離れていきましたよ。だけど、昔も今も変わらず応援してくれる人たちももちろんいて、だからこそ、支えてくれる人たちへの感謝の気持ちが、前にも増して強くなりました。自分の走ることへの意味も、変わったと思いますよ。

―今の中野さんにとって、走ることの意味とは?

裏方的な仕事も経験したことで、その大変さも理解出来たつもりです。だからこそ、今は「自分ひとりで戦っている訳じゃないんだ」と思えるようになった。自分が走ることで周りの人と喜びを共有できる、そしてその人たちに勇気を与えたいという気持ちが強いです。だから、いろいろなことを経験して、もう失うものは何もない、あとは結果を残すのみ。これはもう、レース人生最後の目標ですね。

中野信治
>>Page1 >>Page2 >>Page3

中野信治サイン色紙プレゼント!!   「インディと私」〜それぞれのStory〜
 
Indy ozora web TOP